尊い生命を救うという理念のもと発足した赤十字

赤十字は、イタリア統一戦争の最中に、スイスの青年の手によって立ち上げられました。戦争犠牲者の悲惨な状態を目の当たりにした青年は、人間として尊い命を救うことは責務だという理念をいだき、赤十字を発足しました。スイスのジュネーブに赤十字が発足した当初は、僅か5人ほどの小さな組織に過ぎなかった赤十字は、その活動理念が受け入れられ、瞬く間にヨーロッパ全土へと広がっていきます。1863年、ヨーロッパの16ヶ国が参加しての国際会議が開かれた後、ジュネーブ条約の調印を切っ掛けに、国際的な赤十字組織が生誕します。

日本に赤十字の概念が取り入れられたのは、明治時代に遡ります。西南の役の際に、赤十字の理念を掲げた救護団体である博愛社が立ち上がったことが前身です。発足当初は、敵味方を区別することなく傷付いた人間を救護するという博愛社が掲げた活動理念は、なかなか受け入れられませんでした。

西南の役の際には一般に浸透することがなかった赤十字の理念も、皇室の指示と有識者の賛同によって基礎が固まっていきます。西南の役から10年ほどの時が過ぎた明治19年、日本はジュネーブ条約への参加を果たします。以後、博愛社は日本での赤十字としての活動を始めるに至ります。人道と公平、中立を旗印に、独立的な立場として傷病者の救護を行なう赤十字の理念は、今日も日本の看護業界に継承されています。現在の日本赤十字社は、国内に限らず、海外に至るまで活躍の場を広げています。